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ニーズを読み取り、新業態を開拓し続ける じっとしていない会社

ティッシュの手動式自動販売機から発展したものとは?

父は板金職人で下請け加工ではなく、自らのアイデアでものづくりをしてきました。父は、人に言われてやるのが好きじゃなかったので、常に自分で考えてものづくりをしていました。当時は板金技術を生かして駅のトイレ横に設置するためのティッシュの自動販売機を製造していました。

ティッシュの自動販売機、小さなレバーを下ろすと、ティッシュが1個落ちてくる。形は一般的なポケットティッシュと同じだが、サイズはやや大きめ。

手動式自動販売機は、ティッシュだけでなく、ライターの自動販売機、ホテルの旅館などに設置するための剃刀用もありました。板金技術があったので、手動式自動販売機の完成品を製造して、自動販売機を売るだけでなく、中身の商品補充もしていました。この手動式自動販売機の開発が株式会社ナコムの現在の原点となっています。この開発があったからこそ、レジャーホテルとの縁ができました。というのはテッシュやライターがあまり売れなくなった頃、レジャーホテルの部屋に避妊具の自動販売機を導入することになったんです。レジャーホテルでは、当時カップラーメンくらいしか部屋で食べるものがなかったんですが、食事のサービスをしたいから考えてもらいたいと相談を受けました。

業務用食品卸に業態転換!食のプロデュースでレジャーホテルの発展を支える

2000年頃から冷凍食品の卸の方が主流になったので、手動式自動販売機の製造を止めて、2004年、業務用食品卸に業態転換をしました。大きな決断でした。レジャーホテルは食に詳しいわけではなかったので、メニューを作って欲しい、料理の写真も撮って欲しい、メニューの構成を考えてほしいと、様々な要望が出てきました。非対面なので、メニューを見ただけでどんな料理が分からなければならないですし、冷凍食品を盛り付けるので盛り付けたときにおいしそうに見せるための写真が必要でした。こうして、要望に対応していく中で、レジャーホテルの食のプロデュース会社へと舵を切りました。私が父の元で仕事を始める前は、製造メーカーの海外事業部に所属、海外転勤の指令が出たときに前職の会社を辞め、ナコムに。そんな海外勤務の話が出たのが退職のきっかけですが、父の会社はアイデアが生かせる会社だから、やりがいがある、と会社に戻る決断をしました。

「ほっこDELIブランド」で介護事業へ

2015年に代表取締役に就任し、レジャーホテルの食のプロデュースに加え、もうひとつの柱となる事業展開に着手しました。高齢者向けの食のサービスです。以前から社会貢献の仕事をして、社員のやりがいをもっと大きくしたいと考えていたそんな中、高齢者向けの施設の勉強会に参加したことがきっかけでした。社会課題の仕事がしたいという思いと、マーケットに今の事業が生かせると感じたんです。最初は、機械を導入して冷凍食品のリパック(※1)事業をスタートさせました。冷凍食品をバラピッキング(※2)は今までもやってきていたので、小規模のデイサービスの配食にも対応が出来ました。その後、2021年に「ほっこDELI」というブランドを立ち上げ、高齢者施設向けに冷凍食品の配食サービスを開始しました。

※1 リパック:小分け・袋入れ替えの作業
※2 バラピッキング:出荷する商品の梱包箱を開封し、1ピース単位で集める方法

これまでの介護食の概念を覆す 見た目も味もそのままの介護食

介護食の世界は競合他社も多く、比較されやすい…そのため独自商品の開発に取り組み始めました。それは介護の現場で管理栄養士の岩本恵美先生(※3)と出会って、先生が作る介護食に驚かされたのがきっかけです。ミキサーで柔らかくしただけでは見た目も悪いですが、岩本先生は、ペーストした魚の身に焼き魚の皮を貼りつける工夫をされていて、見た目は焼き魚そのものでした。ただ、その介護食をそのまま踏襲しても施設の現場でつくるには手間暇がかかる為、誰でもできる手軽なものではありませんでした。

※3 岩本恵美 管理栄養士。同志社女子大学食物学科管理栄養士専攻卒業、大阪ガスに料理講師として入社。給食委託会社やケアハウスの給食業務に携わり平成18年から特別養護老人ホームフィオーレ南海に入職し、「やわらか食=やわ楽」を開発、現在に至る。また、地域で開催される、介護食・嚥下食(※4)の講習会の講師として、「やわ楽」の普及に努めている。
※4 嚥下食(えんげしょく)とは、飲み込みや咀嚼といった嚥下機能の低下がみられる場合に、嚥下機能のレベルに合わせて、飲み込みやすいように形態やとろみ、食塊のまとまりやすさなどを調整した食事のことを言います。

スプーンでつぶせるほど柔らかい「最幸のやわらぎ」の誕生

商品化に向けては、岩本先生に指導いただきながらウチの調理にたけている社員や管理栄養士の社員が苦労を重ねながら主体的に試作品をつくりあげてくれました。アイデアを出し合い、何度も試作を重ね、試食を繰り返しました。うまくできたと思っても解凍したら形がくずれてしまうこともありました。それならば、くずれない方法はなにかを模索、こうした努力を重ねた結果、ようやく納得のいく嚥下困難者向けの見た目を再現した冷凍食品が完成しました。量産の為すぐに工場に話を持ちかけましたが、できないと断られました。それなら、自分のところでやるしかないと。事業再構築補助金を受けることができたので、2023年にセントラルキッチンを作り、噛まなくても舌でつぶせ、見た目も味も栄養も考量した嚥下困難者向けの冷凍食品が自社で作ることができるようになりました。例えば、「やわらかとろっとビーフステーキ」は、見た目はステーキと同じ、焼き目もついています。ソースはムース状層とソース層の2段階構造になっているので、食べる人の状況に合わせて手元で調整が可能です。

ナコムの福祉事業ほっこDELIができること

世の中にはこんな介護食を求めている方はたくさんいます。これからも介護の現場だけでなく、自宅で食べたい層にも届けるため、販路を広げていきます。

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